【短編】初恋は咲き乱れる花火とともに



人ごみの中を掻き分けていく谷崎。

どうやら人の流れとは反対方向に向かっているみたいだ。

さっき繋いだ手は、繋がれているというより、引っ張られているに近い。

そのことが、2人がはぐれないためだけのものであると物語っていてなんだか少し悲しくなった。

周りからは徐々に人の姿が見えなくなり、私は公園から離れた港近くに来ていることを知る。

突然立ち止まった谷崎に、パッと放された手。

ついさっきまでずっと握りしめていたのに、私の手のひらはもう寂しがっている。

「着いた。」

谷崎は振り返って、そう言った。


辺りは暗く、目の前は海。近くに建物はなく、あるのは街灯だけ。


上を見上げると、満天の星空が広がっている。

「綺麗...」

私はそっと目を閉じた。小さく聞こえる、穏やかな波の音と潮の香り。私の心がどんどんすみわたっていく気がした。