待ち合わせの15分前に着いたのに、そこにはもう谷崎の姿があった。

「谷崎ー!」

呼ぶとこちらに気づき大きく手を振ってくれた。谷崎は小走りでこちらに来る。

「えっ」

私を見た谷崎はそう言って驚いた表情をしてから慌てて上を向き、頭をガシガシと掻いた。

なんだか急に浴衣を着てきたことを後悔し始めて、谷崎に浴衣の感想を言われるより先に話をふる。

「えっと...あ、汐田くんと林原くんは?」

谷崎はあーと呟いた。その顔はいつも通りに戻っていた。

「あいつら、腹痛いとか言い出して...あ、それより友達は?」

「えっうそ。優子もお腹痛いって言って行くのやめるって...あ。」

ここにきて気づく。手を回すっていうのは、そういうことか。ちらっと谷崎を見ると、谷崎もこっちを見ていて目が合う。

これから2人きりかと思うと、その事実に異様に照れてしまって、一瞬で目を反らした。それは谷崎と同じタイミングだったかもしれない。

きっと私の顔は真っ赤だ。

どうか、谷崎に、気づかれませんように。