その後も谷崎と駅まで、セブンの話からクラスのことや部活のこと、いろんなことを話した。
谷崎は私が駅に入るのを見送ると、駅は通り道にある~なんて言ってたのに、また学校の方に引き返して行った。
「なんだ...通り道じゃないんじゃん。」
こういう時、わざわざ申し訳なかったなっていう気持ちになるのが普通なのかもしれないけれど
今私の心は、優しい嘘をついて送ってくれたことへのうれしさでいっぱいだ。
私たちは、今日はじめて話したとは思えないほど、仲良くなった。
私が谷崎新一、という男が野球部のイケメンエースピッチャーであると同時に、モテるのに彼女を作らない人だと噂されていることを知るのは、もう少し後になってからである。
次の日からも、部活終わりに帰り道でばったり会うことが多くなり、
なんとなく話をしながら、駅まで2人で帰るようになった。
学校から駅まで、歩いて20分ほどかかる。
今までは、一人、重いリュックを背負って黙々と歩く道が、憂鬱でしかなかったのだが、谷崎とする他愛も無い話がすごくおもしろくて、楽しくて
駅がもっともっと遠ければいいのに、と思うようになっていた。