遠い君へ。

少しずつ夏に近づいてきた。
【今日撮影だ～。ぶっちゃけ放課後ってみんなと遊びたいんだよね】
「だよね～。あたしも彩子と遊びたいもん！」
彩子を呼び捨てで呼ぶようになったのはつい最近。
あずきの影響もあって、自然と彩子と仲良くなっていつも一緒にいるようになった。
たまにふと、どうしてあたしが彩子の隣にいるんだろう…？
種類が全然違いすぎるのに。
って疑問＆不安になる。
【さっきのノート貸して？】
「机に入ってるー」
【さんきゅ】
永人くんと何だかんだいつも話してる気がする。
ノートもよく貸す。
だって授業中寝てるんだもん。授業に集中しない人嫌い！
【咲ってあいつと仲いいよね！】
「えっ、そうかな…？」
【女子の大勢敵に回すことになるよ】
彩子ははっきり物事を言う性格だから、傷つく人もいると思う。
あたしはあんまり気にしない性格だから、はっきり言われた方が理解できるしスッキリする。
「でも別に仲いいわけじゃないけどなぁ」
【いや周りからはそう見えるよ。結構あいつモテるからね】
「あぁ、モテそう。気を付けるね」
【でも何か、咲だから大丈夫かも知れないけどね！】
「何で？」
【地味だから！】
「地味・・・」
【そう。地味！だから今から可愛くなればいいんだよ！】
あたしって地味なんだ…(笑)
凡人だとは思っていたけど、列記とした地味女なんだね…！！
彩子はあたしの肩を励ますように叩くと廊下に出て行った。
「地味か・・・」
【ノートありがと】
「もう写し終わったの？」
【あぁ俺じゃなくて、凛に貸した】
「そうなんだ。ねぇ、あたしって地味？」
永人くんはベランダに出ていき、手すりに寄り掛かった。
こう見ると確かにモテそう。かっこいい。
でもなぜか恋愛対象に入らない。
【初めて話したとき清楚だな～って思った】
「清楚！？」
【うん】
「どうも・・・」
恥ずかしいな～。男子から清楚って言われると嬉しい！
【でもよく見ると……普通だよね】
清楚って言ったくせに！よく見ると普通って何だ！
なんか笑い出したぞ。馬鹿にしやがって…。
「馬鹿にしてるでしょ！」
【うん。分かったんだ】
「くっそ・・・。何でこんな人がモテるの？
あたしはモテないのに」
【地味じゃなくなったらモテるんじゃない？】
「やっぱり！！地味って思ってたの！？嫌いな男。発見」
【うける】
「嫌い！」
あたしがふざけて言うと、
【ふーん。俺も】
って真顔で返してきた。

それから永人くんとは、話さなくなった(笑)
喧嘩じゃないし、お互い冗談で言い合ったことなのに(永人くんは本気かも知れないけど)、よく話していた頃が楽しかったから、毎日どこか物足りなく感じる。

それからあっという間に夏休みに入った。