そして僕は恋を知る



街を歩きながら、沢山話した。

この時間だけは、君はあたしのもの。

あたしだけのもの。

この場所にはあたしから君を奪うものは何もない。

たった少しの時間でも、嬉しかったの。

全部が愛しかった。

全部があたしのものに思えた。

電車に乗って、現実へもどる。

幸せな時間を邪魔するのは君の門限。

どんどん見慣れた風景に引き込まれる。

あたしたちの時間はもう終わりとばかりに、夜の闇が濃くなっていく。

君の家の近くの駅で電車を降りた。

行くときに乗ったのは、二個前の駅だったから、そこまで二人乗りでいった君の自転車を置いてきた。

門限もうすぐだから、と、自転車の鍵を渡された。

使っていいよ、と言われた。

君のものを使えるということが、ただ単純に嬉しかった。

現実にもどってからも、君はあたしに幸せをくれた。


.