はばたいて

私は早速、動きはじめた。
0からのスタートだ。誰にも聞こえないような音量で私はつぶやいた。そして私は昨日、2人が考えてくれたことを頭の中から思い出す。
「やっぱり、最初に吹奏楽を部に入れたいっていうことを先生に伝えないとね。それからだよ。」ちーちゃんが言ってくれたことを思い出して、私は職員室に向かった。
「失礼します。1年B組青谷アミです。部活を作りたいのですが、そのことに関わっている先生はいらっしゃるでしょうか?」
「あー、ハイハイ。僕だね。」
「あっ、そうなんですか?あの…」
「なんの部活をつくりたいのかね?この学校は言ってくれれば協力する。」
「は、はい。吹奏楽部を作りたいんです。」先生はいきなり黙ってしまった。やっぱり、吹奏楽は触れちゃいけないんだ。
「…吹奏楽ねぇ。あなた…青谷さんだったね。青谷さんは知っているのかい?廃部になってしまったことを。」
「はい、でもどうしても私は吹奏楽がやりたいのです。勝手なことなのかもしれませんが、私は…吹奏楽部を作りたいのです。」
「そう言われても…やっぱり…」私は腹が立った。自分の好きなことをしてはいけないのか?
「お願いです。吹奏楽部つくらせて下さい!私は…吹奏楽をここでやりたくて一生懸命勉強してやっとこの学校に入れたんです。それで…」
「あー、うるさい、うるさい。だいたいねぇ、あなたそんなに吹奏楽が上手いの?ふっ、ぜひ見せてもらいたいもんだ。どーせ上手くもなくて口だけのオンナだろ。」私はもう声も出せなくて、ムカつくとか腹が立つとかじゃなくて、ただの図星だった。私は吹奏楽が上手いわけでもない。誰かに泣かれた事もない。一生懸命頑張ったって2番目か、3番目にしかなることが出来ないのだ。先生に言われたあの「トップ」はただのお世辞で私を有名な学園に入れたいだけだったのだ。それなのに私はその言葉を信じて今日まで来ちゃっただけなのだ。バカだ…私…
「先生の時間を奪ってしまって申し訳ありませんでした。失礼します。」涙を必死に隠して私は走って行った。
「ただいま…」寮に戻って2人にはちゃんと言おうと思った。やっぱり吹奏楽部をつくらないことを。
「あっ、どうだった?」
「あのね…私、吹奏楽部つくらない。」
「え?は?」
「千恵ちゃん!どうして?何かあったんでしょ?アミちゃん!」
「あるけど…ホントくだらないの
…2人に言える話じゃない。」
「いいの。くだらなくても!!言って!」私は少しうつむいて、やっぱり2人にはちゃんと言わなきゃいけない責任がある。2人は協力してくれるって言ったんだもん。と2人にすべてうちあけた。
「…そんな人のためにやめるの?自分に自信がないだけじゃないの?諦めたいだけじゃないの?」ちーちゃんの言うとおりだ。私は諦めたいだけなんだ。言い訳しているだけなんだ。
「うん。そうだね。でも、やめるしか…」
「分かった。アミちゃんがやることだもんね。責めるようなことしてゴメンね。」それから、私たちはあんまり喋らなくなってしまい友達なのかわからなくなってしまった。