私は不安になりながら、またもや音楽室に行った。
「失礼します」
「そんなことイイから、これなめてて!」先生から木の棒みたいなモノを渡される。リードだ。サックスでも、このリードが必要で使っていた。なめると、やっぱり木の味がしてちょっと気持ち悪かった。最近、使ってなかったからな。
「あの…先生」
「あー、ハイ。」先生はマウスピースにはめて私に渡し、
「これ、吹いてて!」サックスと同じように吹いて見る。
「ブー」あ、鳴った。サックスよりは私的に難しく顔がひきつってしまう。
「もっと、」もっとってどのくらいよー!
「ブーブー」あ、さっきと違う。同じブーという音だったが、今吹いた音の方が強くて自分の吹き方も違ったような気がする。
「そう。下の歯を唇で巻くようにして吹く。」また、やれっていうことかなと思ってさっきの口で吹いた。
「ブー!」
「ん、大丈夫だな。じゃあ、はめるから貸して!」さっき吹いたマウスピースはクラリネットのモノらしく、クラリネットにはめた。
「じゃあ、ドの指」
「え?」そっかと軽くつぶやいて、クラリネットを持って吹いて見せた。先生、クラリネット吹けるんだな。
「こうな。上の穴を全部押さえて…」
「ピー」あれ?さっきと同じように吹いたのに⁉
「おい、口変わってる。」え?でも変えてないはずなのに。肺活量が足りないのかな?最近やってなかったから。そう思って力いっぱい吹いてみる。
「ピーピー!ピー」ダメだ。全然吹けない。なんで違うんだろう。
「とにかく、それ吹けるまで練習な。オレは後の2人も見なきゃいけないからな」
「…ハイ。」なんだか見捨てられた感じがして目が潤んだ。
「こんなんじゃダメ。」色々と工夫して吹いてみる。
「ピー」お腹から吹いてみたが上手くいかない。やっぱり問題は口かな。鏡を探してその鏡の前でやってみる。サックスのときも、こんなことやった。サックスだって、最初から吹けた訳じゃない。毎日、毎日先輩にイヤというほど教えてもらいに行って、やっと出た音だった。他の人より何十倍も遅れをとっていたけど、最後までやり通せた。吹きたい音をイメージしてすっごく遠くまで届くようなまっすぐな音を出す。これが出来たら…
「ドー」ホントに聞こえるか、聞こえないかの音量でドという音が出た。ココロを落ち着かせてもう一度。
「ドー‼」今度は確かに聞こえた。確かな長い音が。
「先生に報告だっ!」まっすぐ先生を探して歩いていると先生の声が聞こえて来た。
「違うんだよね。もっと、音程しっかりとって!」準備室からだ。少し覗いてみると、ちーちゃんが見えた。
「えっと…」ダメだよ、先生!その説明じゃ私でもわかんないよ。
「わかんないか。んーと…オレはどっちかっていうと、木管の方が得意だからなぁ。」
「先生!」私が言うと、先生はホッとした様子で私の顔を見た。それで先生か?
「あ、吹けた?」
「え、あっハイ」先生、ちーちゃんの練習辞める気?
「ん、じゃあ高碕さんは筋トレやってて!」
「ぁ。はい…」ちーちゃんのさみしそうな表情初めて。相当、辛いだろうね。
「先生、私はいいです。ちょっとトイレ行きたくて…聞きに来ただけですから。」先生にウソを言ってから私は出て行った。
「じゃ、いっか。高碕さんはその音が出るように頑張ってね。」
「はい…でも、きっと出ません。私には音楽なんて…ムリなんですよ!」
「どれも、きっとでしょ?まだまだ分からないでしょ?青谷さん、あなたの友達。青谷さんはさぁ、高碕さんと違って音楽経験者。でもだからこそ知っていることもあるけど、自分の弱みも知ってて。自分の取り柄の無さも知っているでしょ?それって、ものすごく辛いと思わない?」
「思いません。だって、アミちゃんは…全然大丈夫じゃないですか?取り柄の無さなんてキレイゴト!アミちゃんは…音楽をちゃんと知っている。今までチアをやって来た私とは断然有利‼」
「そりゃ、チアをやって来た君と吹奏楽をやって来た青谷さんではえらい違いだろうね。でもさぁ、中学の青谷さんを考えて見なよ。最初は全然吹けなくて、先輩に頭下げて何度も聞きにいく。やっと吹けた音はスレスレ。コンクールに出してもらえない。青谷さんの中一のときはこの日々が続いたんだって!だけど、それでも…青谷さんは諦めなかったんだよ。ね?辛いでしょ?他の人より何十倍も頑張らなきゃいけない努力。それをやり通せたから今の青谷さんがいるんじゃない?」
「変なこと言ってすみませんでした。練習します。」
「2度目はないよ。」
「はい…すみません。」

そんなころ、アミは音楽室でドの音を何度も練習していた。やっぱりたまにピーという音が出てしまうのだ。
「安定しない。」
「ピー」どうしても、上手く音が出せない。また、さっきに戻ってしまった。
「ドー」鳴った。今の音はどうやってならしたんだっけ?思い出せるわけないか。意識して吹いた訳じゃないし…意識して…あ、私は今まで頭で考えしすぎて音のイメージをつけてなかったかもしれない。今は意識しないで吹いた。 次はもっと‼
「ドー」確かに鳴ったがいつもの音と違う。ピアノでいうと…⁇
シー♭だっ!この音は間違っているのかな?あっているのかな?サックスとクラリネットの違いがイマイチわかんないな。今度先生に聞いておこう。って!私まだ楽器決まってないんだった。
「おーい、ちょっと集まれ!」先生の声がかかってみんなのところに集まって行った。