「・・・おまたせ・・・」


さっきよりトーンの下がった声。


すぐに気付いた。


私は布団から顔を出す。


彼の表情は、口は笑ってても目は澄んでいて・・・。


声も掛けてあげられなかった。


「ごめん・・・俺・・・用事ができた」


彼はその声のトーンのまま、そういう。


・・・どこに?


そう聞こうと思っても、聞けない。


「鍵、ここに置いて行くから・・・勝手に帰って」


カシャ・・・と鍵をコップの隣に置いた。


それから、部屋を出て玄関の戸がバタンと閉まる音がした。


私は何も言えず、その場を見続けた。