階段を駆け足で降り、目の前の玄関にあるスニーカーをゆっくりとはく。

紐をしっかり結ぶと、ドアに手をかけ、

『行ってきます…。』

誰もいない家に小さく声をかける。

…うちは、お父さんと私しかいない。

お母さんは、4年くらい前に出ていった。

娘である私がいうのも変だけど、すごく美人だった。

だけど、プライドが高く、気に入らない事があるとすぐ怒る人で、私は苦手だった。

お父さんが仕事で何かあった時も、すっごく怒って、家を出ていった。

そして、それっきり帰って来ないまま。

一方、お父さんは、お世辞でもイケメンとは言えないような顔の人だった。

一時期仕事で失敗したけど、今は大成功している。

結構、上の方の位で、お父さんも満足しているようだ。

お母さんが出ていった事に対しては、私もお父さんも何も思わなかった。

むしろお父さんは邪魔だったのかもしれない。

…さてと。暗い話はここまでにしておきましょうか。

今は、服のことに集中しよう。