「あ!田中さん…だっけ?w」

さっきからいることを知ってるのに、井上さんは、今気付いたというような感じで問いかけてきた。

「っ…!」

声が出ない!

出るのは、スーっという息だけ。

慌てた私は、コクコクと高速で頷く。

声が出なかった事に、私は驚く暇なんてなかった。なんたって、強敵と戦ってる最中だったから。

ドクドクと鼓動が激しくなるにつれて布団を掴む力も強くなる。

また倒れるのではないかと心配する自分に、大丈夫だと励ます自分がいて、なんとか呼吸は乱れずにすんだ。

それでも、すごく怖い。

「なんで、ここにいるのぉ?あ、そっか、倒れたからかぁ。w」

…ドクン。

こんなに、緊張するのは、人とあまり話さないからだと思う。

誰にも、気づかれなかったから…。

でも、木戸が話しかけてきてから、気付かれるどころか、憎まれて…。

存在に気づいてもらって、嬉しくて。

だけど、憎まれて、悲しくて。

微妙な気持ちで。

「あーそういえば、さっき雅君になんか話しかけてたよねぇ?なに言おうとしてたのぉ?」

緊張する私をよそに、話続ける井上さん。

別に、私が何を言おうと勝手じゃん。

と思いながら、なんて答えよう?と考える。