ほんのりオレンジ色に染まる空、
下校の時間を告げるチャイムが鳴り響く。

ある学校の屋上に一人の男子生徒が眠っていた。

彼は毎日のように学校来ても教室には寄らず真っ先に屋上に向かっては一日ずっと屋上で過ごしてる。

するとゆっくり屋上のドアが開いた。

静かに彼に忍び寄る影が一つ。

ドスンッと彼の顔の真横に教科書が詰められた鞄が落とされた。

だが、それでも彼は起きる気配すらない。

ハァ…

小さなため息が空しくも風に消された。

すると、スゥッと息を吸い込む音が聞こえた。

「いい加減起きなさーーーいっ!!!」

その声は部活で学校に残ってる生徒達にまで聞こえた。

彼女の声にまた始まったと生徒達はやれやれと言ったような感じだった。

「…香織、煩い」

眉間に皺を寄せまだ眠そうな顔で彼女、佐々木香織を睨む。

「あのねぇ…毎日毎日授業サボってずーっと屋上で寝てて…よくそんなんで学年トップ維持できるよね」

「別に…授業受けなくても大体分かる」

「くぅーっ!!それはあたしに対しての嫌味か!!
必死に勉強してるのに学年二位のあたしに対して喧嘩売ってんのかーっ!!」

まるで猫が威嚇するように目を吊り上げ叫ぶ香織。

そんな香織に対して気だるそうに上半身を起こして夕日が浮かぶ空を仰いだ。

「ねぇ、尚哉ーいい加減授業出ようよ。
せめて数学くらいさ…ゆうちゃんにどやされるのあたしなんだよ?」

「嫌だ、めんどくさい」

彼、橘尚哉はため息混じりに言葉を漏らした。

「あー、はいはい。そーですかぁ」

このやりとりを何度繰り返してるのだろうと段々バカらしくなった香織は尚哉の横に腰を下ろし同じように空を仰いだ。

「…もうすぐ夏が来るねー」

「そうだな…」

相変わらず顔色を変えず静かに声を漏らす尚哉。

そんな無表情の尚哉が香織には寂しそうに見えた。

夏は尚哉にとって…

忘れたくても忘れられない季節だった。

「…んーっ!よし、そろそろ帰ろっか尚哉」

「あぁ」

「はい、あたしの鞄もよろしくっ」

「…自分で持て」

「ちぇっ」





"なおちゃんっ"





「…!」

「もー尚哉!置いてくよー?」

「あ、あぁ」





それは幻聴か、



何処からか俺を呼ぶ



君の声が聞こえた気がした…









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