大切なもの

思う存分泣いた後、これからのことを話し合った。

「どうやったら元の世界に帰れるかな…?」

小声で聞く。
本当は、ずっとここにいたかった。
でも、二人に迷惑をかけたくない。

「薫ちゃんはさ、よろけたらこっちに来たんでしょ」
「……うん」
「よろけたら帰れる、とか!!」

そこで試しによろける。
瞬間、私は強く願っていた。

(ここにいさせて!!)

その思いが届いたのらしい。
恐る恐る目を開けても、場所は変わっていなかった。

「ダメだったね」
「どうする?これから」

二人が話している。
私はソファに座り直した。

「今週は親が旅行に行って帰らないから、薫ちゃんはうちに泊まりなよ」

アズちゃんが微笑む。

「着替えがないから、買いに行こう。あ、敦は留守番ね。晩ごはん作って」
「カレーでいい?」
「オーケー。お金は、ママのへそくり♪」

アズちゃんがタンスの引き出しをあさりだす。
まもなく、分厚い白い封筒が現れた。

「見っけ♪57万って書いてある!!最近の大人って言うのは金持ちだな」

そう言って、アズちゃんが一万円札を7枚取る。

「7万も!?悪いよ」

私が慌てて言っても、

「いいのいいの♪」

と言いながら、封筒の金額を「57万」から「50万」に書き換える。

「行こっか」

封筒を元の場所に戻しながらアズちゃんは笑った。