大切なもの

「アズちゃんには関係ないよ!」
「……は!?」
「何よ、自分のことは話さないくせに、人の心の中には入ってきて。
陸上部のことがなんか関係あるわけ!?」

はじめて人に怒鳴った。

「そう思ってるんなら言えばよかったじゃん!!
心でそう思うだけで気づいて欲しいなんて、甘えないでよ!!」

ケンカって、こんな気持ちなんだ。
友達も、兄弟もいない私は、ケンカをしたことがなかった。
はじめての、ケンカ……。

「………ゴメン」

人が怒るのは見慣れている。
でも、自分が怒るというのは、初体験だった。

「いいよ。でも、思ったことは何でも言ってね。友達なんだから」

"友達"
アズちゃんは、友達だと言った。
今まで、そんな風に言ってくれる人はいなかった。
みんな知り合いだった。
嬉しさで、また涙が出る。

「薫ちゃん!?何で泣くのよ!?」
「ありがとう………アズちゃん……」

アズちゃんはしばらく目を丸くしていたけど、すぐに頭を撫でてくれた。
アズちゃんの手が動く度、アズちゃんの長いポニーテールが揺れた。