大切なもの

「薫!!」

耳元で怒鳴られた。

「一人で勝手に逃げるの?私だってあんたとおんなじ気持ちなんだよ!?」

アズちゃん……
そうか。
同じなのか。
少し気持ちが落ち着いた。

「ごめんなさい」
「ねえ、なんで陸上部やめたの?」

それ、関係あるのかな……
言いたくない。
悲しすぎる過去だった。
でも、話すことにした。

「走ることは楽しかった。でも、部内にも、学校内にも友達はいなくて。
いつも一人だった。そして、いじめられるようになって。
影で悪口言われたり、話し合いとかでも、私に意見を言わせなかった。
で、県大会のリレーでアンカーにされたの。
そこで負けて。ますますいじめがひどくなる気がして。」

一瞬の沈黙。
それを破ったのはアズちゃんだった。

「……逃げたの?」
「…………うん」
「そんなんだからいじめられるの!!」
「アズ、言い過ぎだ」
「だって、そうでしょ!?友達作ろうともしないで、逃げて。」