大切なもの

「もしかしたら、大山さんはパラレルワールドに来たのかも。」
「えっ……」
「大山さんではなく、アズの産まれた世界に」
「つまり、私はここでは産まれなかった。かわりにアズちゃんが産まれたってこと?」
「うん」

ありえない。
でも、可能性はある。

私が産まれなかった世界。
私の必要性がない世界。

「薫ちゃん!!」

いつの間にか涙が頬に伝っていた。
アズちゃんが産まれていても変わらない世界だったら、私なんて産まれていなくても良かった。
私なんていらない。

「大山さん、落ち着いて」

うるさい。
耳をふさぐ。
一人になりたかった。
一人で、考えたかった。
涙が止まらない。