「英里紗さぁ、ほんとその愛想ない顔やめなよー」


幼馴染の亜美。
亜美はいつも私にこう言う。
でも私だってこうしたくてこうしてるわけじゃない。


愛想なくて、仏頂面で、こんなぶっさいくな自分が大嫌いなのに…。




「英里紗だって、もうちょっと愛想があればすごいモテるよ!
今だって男子人気はすごいんだからさー…」
「亜美、別に私モテたい訳じゃないよ。
恋人だって、もうしばらくは欲しくないし…。」
「まぁそうだよね。
あんな辛い思いしちゃあ作りたいなんて思わないか。」



そう。
私はこの半年間でほんとに最低な目にあった。



ヤり逃げ、浮気、裏切り…。

もう恋なんて、しばらくしたくない。



「でもやっぱりさ、英里紗には歳生がいいと思うけどね。英里紗も正直歳生に会いたいでしょ?もうしばらく会ってないね…。」



「歳生か…。」



歳生…
なんて懐かしい響きなんだろう。




小さい頃から亜美、歳生、私、それから大地の4人はいつも一緒だった。



大地と歳生は3つ上、いつもお兄ちゃんのような存在だった。
大地は地元の専門学校にいて、今は亜美の彼氏。



歳生は…。

中学に上がる前の春。
お父さんの仕事で、福島に引っ越してしまった。


お別れの時。
私たちがいつも一緒に遊んだサクラ公園。
そこで歳生は私にプロポーズをしてくれた。


「ちゃんと、大人になったら、英里紗を迎えにくるからな。いい子にしてまってろよ。そのときには…俺と結婚しような。」



三歳にもしてくれたプロポーズ。
歳生と一緒にいることがあたりまえすぎて、歳生が離れていくなんて、そのときは思ってもいなかった。


あれから4年がたった。


今はもう歳生は、
私の手の届くところにいない。


遠い遠い、星のような存在になってしまった。
それは2年前に、歳生がモデルの仕事を始めてから。



初めはそんなに売れないだろうと思っていた。
誰にも取られないって自身で溢れていたのに…。



今ではもう、私は歳生からみたら、ただのファンにしかすぎない…。




私が本当は、寂しがりやで、愛想だってちゃんとあることは歳生しか知らない。


歳生の番号も、メアドも、家も、ちょっとツンデレなところも、私しか知らないのに…。



きっともう歳生は、私になんて目もくれないんだろうな…。