我が家に到着して、間もなくすると、
「また、顔を合わせる事になったね。お邪魔しますよ」
笑いながら伯母が家に入ってきた。
「それにしても、今年の夏は異常な暑さだわ。26年ぶりだって?」
「そうなの。26年前なんて記憶にないけど。7月がこんなに暑かったっけ?」
母は伯母たちにせっせと麦茶を出す。
私も何か手伝おうと動く。
「7月で30度超えなんて珍しいよね。こんな暑い時に、麻弘も逝くなんて意地悪じゃないかい?」
半分冗談で伯母は笑いながら話した。
「ああ、こわい。ばあちゃんは、ちょっと横にならせてもらうわ」
祖母が涼しげな場所を探し、そこに横たわる。
「畳の上だけど、こう暑いと気持ちいいもんだわ」
「身体痛くなるでしょ。布団敷こうか?」
「悪いね、そうしてもらえるかい?」
疲れて横になっていた身体を起こし、敷いた布団の上に再び横になった。
「幸恵も随分、頼れるようになったものだね。ありがと、楽だよ」
祖母はそう言うと瞼を閉じて寝てしまった。
「じっとしているだけでも汗が出るね」
手でパタパタと団扇を扇ぐような仕草をする。
「こう無風だと扇風機でも回さないとダメだね」
そう言って母は、年季の入った扇風機を取り出してスイッチを入れた。
「あー、気持ちいいね」
「やっぱり風あると違うね。四十九日までは、そこの部屋に祭壇を飾っておこうと思うの」
母はグビグビと麦茶で喉を潤す。
「それしかないよね。あ、それ過ぎたらどうするの? お墓に入れるのかい?」
伯母も暑いのか、麦茶を一気飲みする。
「そこなんだよね、問題は。うちは遠いしお墓に入れるってのはね…。両家のどっちに入れていいかもわからないし」
「まぁそうだよね。あんたは末っ子だし、将来お墓を守る立場でもないからね。この辺に永代供養してくれるお寺とかない?」
うーん、どうしようかとしばし腕組みをし悩む。
「ま、焦らずゆっくり考えるといいよ。ちょっと一休み」
伯母は空になったコップを台所に下げて、祖母の隣でごろりと横になった。
「なんだか暑さで眠いのか、寝不足で眠いのかわからないけど、なんだか眠いわ。幸恵も休みな」
母もテーブルから立ち上がると、居間のソファーの上に仰向けになる。
私は部屋に戻る事にした。
部屋は留守にしていた事もあって、少々蒸し風呂状態になっていた。
「うわー、あっつい! 蒸すよ、これ……」
部屋の窓を全開にしても風が入らず、私は小型の扇風機を回した。
「げ…、温い風回ってるし……」
これではとてもじゃないけど、ベッドで一休みする気にはとうていなれない。
(下の方がまだましかも……)
私はとりあえず涼を求め下へと降りていき、台所に近い和室の畳の上に仰向けになった。
身体の下は少々ごつごつして痛いが、窓から入り込む風は心地よい。
瞼を閉じると間もなくしてすぅーと寝入った。