『速報、第七区Aブロックより、暴力行為確認。犯行者は3名、負傷者数名。第一部隊配置準備お願いします。』
早朝五時。人の出入りの少ない時間。SLL特別治安部第一部隊隊員全員に、告げられる。
「だり」
~斗は仮眠中を邪魔されて、ブツブツ言う。
「仕方ないだろ。僕だって眠いさ。」
~斗の言葉が気に触りイケは怒っている様子。
「私語は謹んでください。皆用意はいい?」
@モグが、二人の会話を遮り、皆に問い掛ける。その問いかけに皆は無言で頷く。
「僕とカシは、別行動の監視がメインになると思われる。モグ、リルは頼んだ。」
「俺様はー?」
「知らん」
そんな、ガキのような会話をしながら初めての依頼が、始まった。

『敵北緯三十五度に移動』
「了解。モグそのまま北だ。」
逃走中の犯人を追い詰めるため、上との協力で、位置の特定及び、先回りを試みる。

「くそっ!何なんだ!」
今までなかった事に戸惑う。
「モグ様の命令により停止命令を与えます。従わない場合、強硬手段をとりますよ。」
「誰が従うかチビ!」
まあ、犯人が従わないことはよくあることだ。
「あ?なんて?」
だが、喧嘩を売った相手がまずかった。暴言を吐いた瞬間のことだ。犯人の一人は、ロープのような何かで動きが封じられる。身動きと、バランスが取れなくなり態勢を崩し倒れ込む。と、同時にリルリルが犯人の上に乗っかり足で顔を蹴り始める。
「何て言ったんですか?聞こえませんよー?お手製の縄跳び型鞭の味はどうですかー?っつことで一人捕獲完了ですー。もう少し虐めてから戻りますねー。」
犯人に攻撃しつつ連絡を取る。
「了解です。やりすぎないでくださいね。イケさん一人捕獲完了とのことです。」
リルリルからの連絡をイケに簡単にカシが伝える。
「モグ、クズ逃亡者は後二名だ。北の方向に1人、西の方向に一人だ。」
「クズって酷いなー。イケちゃん。まあ、楽勝。」
「了解。」
イケの毒舌ぶりに呆れながらも二人とも返事する。

「お、はっけーん。ちょーと止まってくれると嬉しいんだけど?」
~斗が犯人に声をかけるも、停止する気はないようだ。
「へー。鬼ごっこ嫌いじゃないんだけどねー。トトノやっちゃおっか。」
楽しそうに笑を見せて告げる。
「アポー?馬鹿なの?トトノ勝てるおもてるの?」
トトノが一声鳴くと相手の動きが停止する。
「楽しいでしょー?ウイルスが、入るの。あ、喋れないか。」
相手が何か言いたそうに口をパクパクするのを見て楽しそうに話す。
「このまま、痛めつけることもできるけど良かったね?俺様が特別治安部でー。捕獲完了。」
「了解です。速やかに帰還してください。」
「残り一人だ。モグ頼んだぞ?」
「了解。」
順調に進んでると思いかけたその時だ。
『アレ?プログラムの歪みを計測。ハックソフトを使い移動したと思われます。現在南Cの48です。』
「モグ厄介な事が起きた。相手はチーターだ。」
「把握。トトノ帰還後作戦変更。後リルリル、~斗帰還でき次第配置準備。カシもオペレーターから、フィールドへ。」
話を聞いて把握すると@モグは、何も戸惑わずに冷静に判断をし、命令を下す。
「了解しました。今からフィールドマップ内へ行かせて頂きます。」
「流石、元ギルド長、隊長様だな。」
カシは、いそいそと準備を済ましフィールド内へ。イケは、皮肉を混ぜながら@モグを褒めた。

「流石にこれなら、あいつらも追いついてこれないだろう。」
余裕の笑みで、逃げきれると確信している犯人。
「SLL特別治安部第一部隊のSS情報課カシと申します。ゲーム内禁則事項第3条に違反したとして身柄を拘束させて頂きます。ご停止願います。」
「っち、追いついたか。悪いな。止まれと言われたら止まりたくない性分なんですわ。」
「あ....待っ....」
カシの停止命令など、聞かずにハックソフトを器用に使い逃げてしまう。
『敵座標東Hの35にて確認。』
「上は、どうやって見つけてんだか?」
イケは、迅速過ぎる上司の働きにポツリと呟く。

「帰還なー。」
「帰還ですー。」
~斗、トトノ、リルリルが帰還した。
「おかえり。トトノは、僕と此処で作業。クズとリルは、再びフィールドへ向かってくれ。」
イケは、二台のノートパソコンをいじりながら告げる。
「「了解。」」
リルリルと~斗は、早速フィールドへ戻る。
「パソコ?何?トトノなにすの?」
「お前は僕と作業だ。」

「いやーそれにしても、イケさん~斗さんにきついねー。」
「ツンデレだから。もう慣れたよ。」
リルリルも~斗もたわいもない会話をしながら目的地へ向かう。

「いくら来ても無駄だぜ?俺にはマリア様がくれたソフトがある限り無敵だぜ。」
「はぁ....。」(まだか?遅いよ。)
犯人は有頂天。@モグは、ため息混じりに追いかける。

「トトノこいつ、こいつの持ってるソフトを使用不可へ。」
「んー。」
イケが指示を送ると、トトノは、二台のパソコンに繋がったプラグを咥えた。

「だから、無駄っつってんだr......あれ?何だ!?」
「やっとですか。SLL特別治安部第一部隊隊長@モグ。あなたをゲーム内禁則事項第3条に違反したとして身柄を拘束させて頂きます。」
「誰が従うか!」
@モグは、ハックソフトを止めてもなお威勢を上げる犯人に飽きれてため息をついた。
「へぇー。これでもですかー?」
@モグのため息とほぼ同時にリルリルが問い掛けた。いるのはリルリルだけでなく、カシ、~斗も一緒だ。
「くそ!なんで動かないんだ!」
「言い訳はSLL特別治安部で、沢山聞かせてもらうわ。」
「イケさん。犯人捕獲完了しました。2名+この一名特別治安部の上へ直接連行しますか?」
「そうしておけ。」
こうして、無事に犯人3名は特別治の上層部へ引き渡された。