今日は相手も刺客になるものが居ないのか全くと言っていいほど事件がない。
「ふぁー...今日はやけに平和だな。」
いつもはイケの特等席のソファーに座りペロを乗せた~斗は大きなあくびをしながら呑気に言った。
「...イケのお見舞い行ってきたら?モグと~斗くらいなら、ペロ許可しちゃうの。」
ペロは~斗に抱きつきながら言った。
「......。」
二人は返事に困った。@モグはいくら事件の報告が無いとはいえ自分が不在になることはどうかと思い、~斗は行きたそうにウズウズしていた。
「ペロは上層部だから強いし、権限もあるのー。えっへんなの。」
ペロは腰に手を当てて威張ったような素振りを見せてウィンクした。

――――――。
ここはリアル、久しぶりに目を覚ました。基本SLLの社員は目覚めることは少ない。飯と風呂くらいである。それもケータイがなれば途中でも戻らなければならない。
「この姿で会うのは久々だな~斗。」
二人は顔を合わせてなんとも言えないような顔をする。それもそのはずだ。SLLの世界とは性別が真逆である。
「そうだな。」
~斗もバツが悪そうに頷く。
「行くか。」
@モグはそう一言言うと、イケの居る病院へと向かうべく足を進めた。

――――――。
場所は病院に変わる。
もともとこの病院も、SLL社のものなので、社員以外は居ないのでアポもなく、教えられている病室へと向かう。
「入るぞ。」
~斗は個室の病室を数回ノックし終わると返事がないのが分かっていて声をかける。
ガラッ。とトビラを開けて二人は中へ入る。
「イケこの姿で合うのは久しぶり。」
~斗は泣きそうなのか愛おしそうなのか、なんとも言えない表情で話しかける。イケもSLLの世界とは性別が違うが、キリッとした目元、伏せられた目を覆う長いまつげ、少し開いた薄い唇。男の感じを保ったまま綺麗さを醸しだす。そんなイケに~斗は話しかけ続ける。
「無理させてごめんな?俺が変わるべきだったんだよな?」
~斗はイケの右頬に手を当てて話しかける。勿論返事などはない。
「イケ守ってやれなくてすまないな。~斗、席を外すから帰る前にロビーに集合な。」
@モグはそう言うと、イケの眠る病室から立ち去った。
「...無理しすぎだろ最前線はお前の仕事じゃないだろ?そんなに傷つかなくてもいいんだよ。」
@モグの影が扉の窓からなくなるのを見るとイケの顔の間近まで~斗は顔を寄せて続けた。まるで恋人に対する口調のように優しい口調だ。普段のおちゃらけた~斗は嘘のようにいなかった。
「今度こそ俺が守るから、目を覚ましてくれ。」
~斗は、イケの頬を撫でてはそっと唇に触れるだけのキスをした。
「前払いで貰ってくわ。」
顔を離せばニヤッと笑った。

――――――――。
「お早いお戻りで。」
ロビーでコーヒーを飲む@モグがそっと紙コップを置いて階段を降りてきた~斗に声をかけた。
「約束してきたよ。」
~斗は、@モグに微笑んだ。
「そうか、じゃあ戻るぞ。」
@モグはクスッと笑っては立ち上がった。