「これ、しっくり来るんだよな。他のもつけてみたんだけど、これが一番肌に馴染むんだ。これじゃないとダメみたいでさ」
俊哉が私に向かって、白い歯を見せて笑う。
その言葉は、腕時計に言っていることだけど、まるで私自身に言ってくれているようで、嬉しくなった。
だから、意地悪はここまで。
「彼女、待たせてるの?」
「あ……うん。ごめん」
俊哉が申し訳なさそうに首をすくめる。
「いいよ。私、もう少しここでのんびりしてから帰るから」
俊弥は、ごめん。と手を合わせると彼女へのプレゼントを手にして席を立つ。
いいんだ、友達でも。
いいんだ、ただの腐れ縁でも。
俊弥がずっとつけてくれている、腕時計のような存在でいられるのなら。



