大好きな視線を掻い潜り私がケーキを完食した頃、俊弥が時間を気にし始めた。
腕時計を何度か確認する。

俊弥の左腕にはまるその時計は、二年前大学へ入学した年の誕生日に私がプレゼントした物だった。
丁度彼女がいない時期で、俊弥はやたらと喜んでくれた。
そのときの時計を、俊哉は未だにつけてくれている。

私が買えるくらいの物だから、そんなに高価なものじゃない。
だけど、俊弥はもう二年もそれをつけ続けている。

どうして、新しいのに替えないんだろう。
彼女は、コロコロ替えるのに。

どうしてはずさないんだろう。
彼女と別れる時のように。

どうして、いつまでもそんな安物の時計をつけてくれているんだろう……。