花は動物病院に飛び込んだ。

俺は物陰に隠れて 花の出てくるのを待っていた。


あの猫がどうなったのか 
そしてその猫を助け出した
花が気になって仕方がなかった。


しばらくして泣きながら花が出てきた。


その様子に あの猫はダメだったとわかった。
階段の一番下に座り込んで 何度も目を
ゴシゴシ拭いていた。

話しかけたいと思ったけど
ずっと隣に座っていたのに 一言も話をしたことがなくて
何て声をかけたらいいのか考えていた。


病院から先生らしき人が出てきた。

「花ちゃん 大丈夫かい?」

「まだ…まだ 生きていたのに……
私が抱き上げた時 私の顔を見たんだよ あの猫…」

嗚咽の中しゃくりあげながら花が言った。

「花ちゃんが助けてあげなかったら
まだまだ痛い思いをしたよ……ありがとうって
言ってたんだと思うよ…」


先生も言葉を選んで諭すように話しているようだった。


「ちゃんと葬ってあげるから安心して……」

「あの猫…タマにそっくりだった……」

「そうだね似ていたね……」

「可哀そうに……」

花は泣き続けていた。