「別れます」


別にどうでもいい関係だった。
ただ暇で 都合のいい男だったから・・・・・
だけどその陰で 泣いて苦しむ人のことを 
想像すらしなかった。


「ごめんなさい………
終わりにするつもりでした……」


飯田の妻は泣き顔から アタシを怒りに満ちた目で見た。


「私が会いに来たこと 彼には言わないでもらえますよね
悪いと思っているなら……あなたからちゃんと
別れるって言ってもらえますよね」


さっきまで泣いてわめいていた人間とは思えない豹変ぶりだった。


「私には守るものがあるから」

そう言うとお腹に手を当てた。


「何も知らなかったことにします。彼には・・・・・
だから彼を
思いっきり捨ててください。未練が残らないくらいに
ボロボロにしてください。それが夫への制裁です」


怖い顔に背筋が凍りついた。


「また過ちを犯したら殺します」


飯田の妻はそう言うと 足早に去っていった。