「さあ?疾風を追いかけるとき、みきてぃが空き教室を物色してるのは見たけどね」
「い、いつの間に!!」
「もう俺らのクラス決定じゃねぇか」
みきてぃとは、俺達のクラスの担任だ。その可愛いあだ名とは正反対。
実際はもうすぐ40歳に差し掛かる、中年男性。世界史担当、だ。
明石美樹(あかしよしき)。この字面を見て、みきてぃと呼ばずに何と呼ぶ。
「女の子かなー女の子?女の子に決まってるよ!」
「何だよその自信は」
笑いながら、和やかに昼食をとる。ただ、俺の頭の中には、ある記憶が甦っていた。
そうだ。確か一週間くらい前。職員室に遊びに行った時にみきてぃに呼び止められて…
「なーんか心配だな」
「何が?」
俺の顔を見て一言、みきてぃが首を捻ってきたんだ。
いくらか何がって言っても、みきてぃは教えてくれなくて。遊びも程々にな、なんて生徒指導という名のやっかみが始まりそうだったから。
慌てて逃げてきたんだっけか。
「女だね。」
「ほらねー?」
