ポツリポツリと言葉を選んで紡ぐ。
人を愛しいと思う感情とか、漠然としたものが。俺には始めから備わってなくて。
欠落しちゃってるんじゃないかなって思う時があるんだ。
大切なものはたくさんあるし、大事にしなきゃって言うのもわかる。
斗己とか、俺を引き取ってくれた両親とか、出石園の先生、とか。
「だけどさ、誰かを好きになるってのがいまいちわからない。すごい怖いんだ。」
「うん…」
誰かを愛して、それを伝えて、通じあって。結ばれて。
そうして生まれる筈の新しい命の筈なのに。
そうして抱き締める命の筈なのに。
「俺らは捨てられたんだぜ?無条件に守ってくれなきゃ、自分の身も守れない時に。
あの時保護されてなけりゃ、もし天気が崩れたりしたらって思うと、俺は簡単にこの世から消えてただろ」
そう言うのが、凄く、怖い。
