「何で私の名前ってキノなんだろう…?」

「知らねぇよ」

「ヒメノの方が可愛いよね?」


俺にきかないでくれ、頼むから。

さあ、と首を横に振っても、どうしても気になるらしい姫乃は、しばらくうんうん唸っていた。


俺はこれ幸い、と自分のテスト勉強を進める。

姫乃に付き合っていたら、いくら時間があっても足りやしないからだ。




「お母さんとかに聞いてみたら?」

「あ、そっか!」

「名前は親がくれる最初のプレゼントなんだって。」


姫ちゃん、きーちゃん、と呟いていた姫乃に、隣にいた養父が声をかけた。

嬉しそうにプレゼントだったんだね!と笑う姫乃と養父を見て、グラスへと伸ばしていた手が止まった。


最初のプレゼント?名前が?

こんな名前、別に欲しくなかった。疾風なんて、別にいらない。


俺の名前は、素敵なプレゼントなんかじゃない。

随分と乱暴な置き土産だよ。