「…寝てる」
「黙ってるといけめんだねぇ」
「む、村岡くん…」
疾風が寝息をたて始めてすぐ。僚と姫乃が保健室に入ってきた。額に熱冷ましシートを貼っている疾風の姿は珍しく、二人は思わず笑ってしまった。
幾分か体は楽になったのだろう。乱れのない、落ち着いた息遣いに安心し、保健室の机に各々の昼食を広げた。
「おばさん何だって?」
「いなくなった!って慌ててたみたい!」
「親不孝だねぇ」
「ね!安心してたよ!」
親不孝やら、色男やら。疾風を誉めているのか貶しているのか。
よく分からない言葉が飛び交う。
当の本人はすっかり夢の中だった。
