「姫乃の前では、そうやって笑っててな」
「…」
「あいつ。何も考えてないように見えるけど、人の笑顔だけは敏感だからさ」
「うん、」
まぁ、頼むよ。
あいつさ、一途に斗己のことを思って、あいつがあんな調子だから。報われなくて、でも、やっぱり思ってる。
程々に目立つ俺等と一緒にいるから、中等部じゃ中々友達ができなくて。出来たと思ったら利用されて。
そんな姫乃の隣に養父がいるようになって、あいつ、すごい嬉しそうなんだ。
「姫乃、良い子だよね」
「まーな」
またくすりと、養父が笑う。俺はその言葉にとても安心して、そっと目を閉じた。
