「寝るわ、」 「うん。ありがとう」 「礼を言うのはこっちだろ?」 聞かれたくないことを聞くような、無粋な趣味は持ち合わせていない。ゆっくりと身をベットに横たえた。 苦笑いを続ける養父を笑うと、養父はそっと首を横に振った。 「ううん。姫乃も柴山くんも。聞かないでくれて」 「そう言われると聞きたくなるけどな」 「ふふ。でも、聞かないでしょ?」 眉にシワを寄せた養父の笑顔から、力が抜けたものになった。 言いたくないなら、言わなければいい。聞かないでいる。 だから、ただ、頼むからさ。