「お前さ、求めてくるばっかだったよな。いい加減だるいよ」
「っ」
怒りで赤く染まっていた彼女の顔に、さっと青がさしたのが分かった。女を傷付ける言葉を、俺は沢山持ち合わせている。
そして、彼女は、傷付くことが初めてなのだろう。その表情には、酷く焦りの色が伺えた。
「私、別れようと思って呼び出したんじゃ…」
「ごめん。俺がもう無理」
俺が並べる言葉は、どれもこれも拒否の言葉ばかりだ。叩かれて、泣きすがられて仲直り?そんなSMな趣味は持ち合わせていない。
彼女も言葉を失ったのか。暫くの間、裏庭の木々が風で擦れる音だけが響いた。
「求めてばっかりって…自分こそ、何も求めてこなかったじゃない!」
真っ直ぐに俺の目を見て言うその言葉に、俺は何も答えられなかった。動けなかったのだ。
だって、それは、酷く正解に近いものだったから。それに、今まで指摘されたこともなかった。