小さくぼやいたつもりだったのに、それはどうやら斗己の所まで届いたらしかった。 振り向いた斗己が、無表情で首を振る。 そうやってカスミへの想いを感じる度に、俺は薄情なんだなと思い知らされるんだ。 出石斗己 出石カスミ 出石疾風 それが、俺が10歳の時に「柴山疾風」になった日までの、俺達の名前だった。