「いつになったら…」
「ん?」
「カスミのこと、忘れんの?」
俺よりもずっと長く手を合わせていた斗己が立ち上がる。自分が持ってきたかすみ草をまた手にして。
俺の質問には中々返事もくれずに、斗己はつかつかと霊園の端の岬へと進んだ。
「いつか。死ぬときには、」
包装を解かれたかすみ草が海に舞う。
斗己の手から離れたそれは、ばらばらに散らばって、岬からは見えなくなった。
海原と空は限りなく遠くで溶け合っている。でも、誰しもが、それが混じることはないことを知っていて。
まるで俺達とカスミみたいだと、言いたくなった。
なぁ、斗己。
最期の時に忘れるってさ、死ぬまで想ってるってこなんだな。
