俺はお前が嫌いだよ。嫌いだよ。
何だよ。斗己を一人、置き去りにして。
いなくなって、それで。それでも。
まだ、縛り付けてる。
「抜け駆けかよ、」
「や」
飾られていた花が、先着の存在を教えてくれた。斗己が持つ花と同じ、かすみ草。
自分の名前の由来だと、カスミが大切にしていた花だった。
先生たちかな。
墓石の前で膝をつく斗己の背中に声をかけると、「うん」と斗己は小さく頷いた。
Kasumi
まるで、何処かの外人みたいに記された名前。
その一文字一文字を愛しそうになぞる斗己を見ていられなくて、俺はそっと隣に腰を下ろした。
カスミ、お前さ。やっぱりずるいよ。
出石でいたくない、なんて。どれだけ斗己を苦しめるんだよ。
