「あ、今日斗己休みか。」
「うん。疾風、何か用があったの?」
「や、いないならいないで良いんだ」
かく言う俺は、あやめという子から告白を受け、例のごとく付き合っていた。
あやめは斗己と同じクラスで、中三の時は俺とも同じクラスだった。先日斗己のクラスに遊びに来たとき、今相手がいないのなら、と言われた次第である。
出石くん、出席大丈夫なの?と首を傾げるあやめに、まぁと頷く。
あいつはそこら辺、上手くやってるよ。
「じゃ、俺教室戻るわ」
「うん。ねぇ、今日の放課後空いてる?」
教室の入口にいつまでも立っているのは少し気恥ずかしく、早めに教室に戻ろうとした俺のワイシャツをあやめが摘まむ。
腰あたりを引っ張られて立ち止まり、片手を上げて詫びると、その手はすんなりと離された。
わかった、と素直に頷いている。
夜メールするよ、と言えば、嬉しそうに待ってると、返された。それに手を振って応える。