養父は、不思議な奴だった。第一印象よりも、ずっと。


まず、距離感。

なんとも言えない絶妙なものを持ち合わせ、姫乃とは中等部からの仲なんじゃ…と思わせる程に親しげに過ごしている。

けれど、クラスの野郎共とは、少し距離があった。


次に、明かさない過去。

転入の理由は訳有りだということは、分かる。だけど、それ以外のことも、殆んど何も教えてはくれない。

誕生日と、地元を離れて独り暮らしをしているってこと。それくらいしか知らない。




最後に、告白を断る決まり文句。

噂の美人と御近づきになりたいと、学年問わず養父を訪ねてきた。


告白だったり、遊びの誘いだったり。

その度に養父は「好きな人がいるから」と直接的に断っているらしい。そんな噂を耳にした。




ただ、誰を好きなのかは、養父しか知らない。