「この学校変わってるから」
「え?」
「理事長とか校則とか。すごい自由なんだ」
このテラスの雰囲気でそれが十分伝わったのだろう。グルリと一周、テラスを見渡した養父が笑った。そうかも、と。
くすくすと笑うことなく、静かに微笑む養父の姿は、正直俺には珍しい。
今まで周りにいたのは、どちらかと言ったら手を叩いて笑う方の女が多いから。
「生徒も少しユニークかもね」
「筆頭がお前だな」
「ひどいなぁ疾風は」
「事実だ事実」
そう言って、僚はその表情を眼鏡で隠す。乾いた笑い声が独特だった。
姫乃とは違うクセが一つや二つじゃない。たくさん持っているのだ。
かく言う養父も、入学して2か月で転校。誰もが振り返る美人。
今も周りの生徒や、通りかかる教師がちらりと見てくる。
ワケアリと思わないで、どう接すればいいんだよ。
「まぁ、じきに慣れるでしょ」
表情を崩さない僚の一言に、そうだね。と養父は頷いただけだった。
