嬉しそうに斗己の後を姫乃が追う。それを見た養父がくすりと笑って俺と僚の隣に並んだ。
姫乃は分かりやすいからなぁ。
「養父、学食のおすすめは親子丼だよ」
「え?」
「ばーか。どう考えてもハンバーグ定食だろ。デミグラスソースなめんな。」
僚が当たり障りなく学食について話題を持ち出した。俺が反論すると、それをお子様、とさらに笑いやがる。
佐津学園の学食のレベルはかなり高いことでよく知られている。
それを少し誇らしく言うと、養父は少し嬉しそうに笑って頷いた。楽しみって。
「天気もいいし、テラスで食うか」
「そうだね。梅雨になる前に行っておかなきゃね」
疾風の隣でいじらしく笑う姫乃を見ながら、俺達はそんな何でもない話題で笑った。
そうだ。もうすぐ、雨の季節だ。
