「あ、斗己!」
そんな俺を誰も慰めようとせず、階段を進んだ時だった。学食や、テラスに向かう波に逆らってこちらに上ってくる男に姫乃が声をかけた。
出石斗己(いずしとうき)だ。
俺とは腐れ縁、というのが一番適切なんだろうか。小さいがきんちょの頃からの仲だから。
気だるそうに、真っ白い肌の斗己は、どこからどう見ても寝起きだった。
「何、保健室行ってたの?」
「ん、」
「飯ねぇなら、学食いかね?」
ちょうど教室に戻るところだったのだろう。でも、今にもまた眠りに落ちそうな斗己を見ると、昼飯を食いっぱぐれるのは目に見えていた。
声をかけると、静かに方向をかえて、斗己が階段をおりだした。
こいつの睡眠欲は、本当に馬鹿にできん。
