「なんで私を抱いたの?」


何てことを言うんだ。女の子が。そう思う僕にとって、目の前で眉間に皺を寄せる彼女は、もう「他人」だった。

何で抱いたかって?覚えてないのかよ。お前が、俺のシャツに先に手をかけたんだろ。


昼休みに裏庭に呼び出されたと思えば、納得のいかない質問をされた。

男子高生にしていい質問ではないと思う。




「何でって…」


困ったように言うと、彼女は顔を真っ赤に染め上げる。怒りの感情がヒシヒシと伝わってくる。

面倒臭いな。何でって?自分の胸に聞いてみてくれ。


先週の土曜日に会った時、ちょっと用を思い出して早々にデートを切り上げた。そうしたら君が友達にそのことを愚痴ったんだろ?

その友達とやらが俺に詰め寄ったことなんて君は知らずに、俺の服を脱がせにかかったんだろうけど。


俺はまた詰め寄られても、と思って君の服に手を伸ばしたんだよ。結局、服は君自身が脱いでいたけどね。




……なんて、正直に言えたら楽だな。

言えねぇ、よな。