「疾風も今日は学食ね!」
「おうよ」
昼休みになると、嬉しそうに姫乃が俺達の所にやってきた。それを見て、朝の会話を思い出す。
俺は、鞄を机の上に置いて、姫乃に声をかけた。
「姫乃ちゃん弁当は?」
「やー言わないでー!持ってくるの忘れたのよー!」
両手で頭を抱えて、いやんいやんと騒ぐ姫乃に、にやりと笑う。知ってる、と言って鞄から姫乃の弁当を出して見せた。
すると、姫乃は目を真ん丸く見開いたあと、満面の笑みで俺に抱き着いてきた。
「ママー!」
「はいはい。お前みたいなお転婆、生んだ覚えねぇっての」
「疾風に育てられた覚えもなーい!」
片手で姫乃を抱き止めて、自分の分と弁当を2つ手に取る。それを僚が受け取ってくれたので、俺はよいしょと姫乃を担ぎ上げた。
ぽかんとしている養父が目に入り、慌てて声をかける。
「俺と姫乃、お隣なんだ。驚かせた?」
「う、うん…少し」
「わりぃ」
鞄から財布を取り出して追いかけてきた養父のそばに姫乃を下ろすと、姫乃は楽チンだったのにーと不平を漏らした。
なんて奴だ。俺は楽じゃねぇっての。
