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「養父愛花(やぶまなか)です。宜しくお願いします」
俺が彼女に頬をひっぱたかれてから1週間。つまり、俺達が貴子を生み出し、寝かせるだけ寝かせて。
蓋を開けてみたら、転入生の名前は養父。黒板に書かれた字面があまりにも衝撃的で、俺は朝の眠気を吹き飛ばされた。
「貴子じゃねぇじゃん…」
「中肉中背でも、眼鏡でもないねぇ」
後ろの席に座る僚が、俺の一人言に反応して笑う。実際に、クラスの連中が浮き足立つ程に、養父は整った身体をしている。
大きな二重の瞳が小さな顔に配置され、栗色の明るい髪がお辞儀をする時に柔らかく揺れた。
「それじゃー養父はあそこの窓際のイケメンの隣だ」
「お、俺か?」
「そう。あの柴山って似非色男の後ろの村岡ってイケメンの隣な。」
「みきてぃーひでぇなー」
あいたたた。自分の額をペシリ、と叩くと、クラスがどっと沸き上がる。僚は俺の後ろで笑っていて、みきてぃは「取り敢えずあそこのイケメン2組だ」と養父に伝えていた。
