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「だめだ、よ…怜くん…やめてっ」

『…ごめん』

そして怜くんは、私を優しく抱きしめた。

『俺、華音のこと…華音のこと…』

「怜、くん?」

『お願いだから…嫌いにならないで…』

怜くんは、消えそうなくらい小さな声で、喉の奥から絞り出すような声で、そう呟いた。

「うん、嫌いにならないから…す…」

私は、言いそうになった言葉を、言わないように手で押さえた。

いつのまにか、怜くんへの気持ちが、好きに変わっていたことに、今気付いた。

『す?』

「なっ、何でもないよ?」

『そう?…じゃあ、そろそろ家帰りな?送るから』

「ありが、と」

よかった、ばれてないみたい…