デリートボタン

『じゃあ…』

─ドサッ─

私は、床に押し倒された。

「あの、怜くん?」

『何?』

「何…するの?」

いくら私の思い描いた彼氏と言えど、少し行き過ぎてるんじゃないかと思う。

『決まってんじゃん、華音が今、期待してることしてやるよ…』

「え、やめっ…」

首筋に怜くんの唇が当たった。

「やだ…っ…」

その瞬間、ドアが開いた。

〈なっ、何してんのあんたたち?!〉

「美沙…助けてぇっ…」

『これからだったのにさ…』

そう言って怜くんは、私からどいた。

『俺、先帰る。また明日。ごめんな、華音』

「えっ、うん…」

怜くんは私の方を一度も見ずに、帰って行った。