【短】花ひとひら






「ダメ・・・私はここを守らなくちゃいけないの。」





「どうして?」





「愛した人が眠る桜があるから。」




「・・・それってお父様とお爺様のこと?」





私はその質問には答えなかった。



答えられなかったんだ。




不覚にも私は自分の愛した夫のことが思い出せない。



その人を愛していたという記憶しか残っていない。




最低な母親だと思うわ。