○レジャーランド、早朝
   ジョギングする若林。

○同、遊戯エリア、
   若林、遊戯エリアにさしかかる。

○同、ハムスターランド入り口、早朝
   晶子、ハムスターの入ったプラスチック
   ケースを運び出している。

   一つ一つ語りかけながら楽しそうである。
   若林には気が付かない。
   若林、立ち止まり足踏みしている。

   若林、そっと近づく。
   晶子、まだ気が付かない。
   若林、一呼吸して、

若林「おはよう!」
   晶子、びっくりして振り返る。
   晶子、ハムスターをかばって恐怖の表情。

若林「あ、ごめん・・・」
   若林、すぐに背を向けて走り去る。
   恐怖の表情のまま、じっと見送る晶子。

○池の山ホテル社員食堂、内
   隅で食べている若林。
   北山がトレイを持って隣に座る。

北山「おう、弟よ。どうだ?いい小説書けそうか?」
若林「ああ、なんとか・・・。それより今朝早くに。
   ジョギングしてたら。ハムスターランドの女の子。
   あいさつしたら、6時ごろ」

北山「朝6時?」
若林「ああ、毎朝彼女だけに会うんだ。賢明にハムスター
   の世話をしている。三日目に始めてあいさつした」

北山「あ、知ってる。朝から晩までハムスターの世話を
   している、ちょっと変わった娘こ。人間嫌い
   じゃないか?ほんと、友達もいないみたいだし。
   24時間ハムスターべったりの子だよ」

若林「今朝始めて、おはようってあいさつしたら、ごく
   普通にだよ。彼女、びっくりして、のけぞって、
   ハムスターを後ろ手にかくまって、ものすごい

   恐怖の表情をしたものだから、俺、とまどっち
   まってごめんと叫んですぐ走り去ったんだが、
   なんだかとても悪いようなことをしたみたいで」

北山「気にすんなよ。ちょっと変わった子なんだから。ハム
   スターを取られるとでも思ったんだろう。じゃあな」

北山、トレイを持って去る。
若林「ちょっと変わった娘こか・・・・」