木村刑事「可能性はほとんどないとしたら、
   何故陶器は側頭部にあたった?」

遠藤「もし側頭部にあたったとしても、同時に二階から落ちて
   いるので粉々になるほどのGはかかってないはずです」

木村刑事「となると、誰かが二階から投げつけたか、あるいは思いっ
   きり陶器を頭上に持ち上げて力任せに投げ下ろしたかですね」
遠藤「そうなりますか」

木村刑事「階段を陶器を持ったまま落ちてみると分かりますが」
   遠藤、タバコをもみ消して、

遠藤「そうですか。どうやって実験するか又今そこまでしても、
   ショックによる心肺停止という直接的な死亡原因はくつがえ
   りません。大騒ぎして徒労に終わる可能性のほうが大ですな」

   木村刑事、タバコをもみ消す。
木村刑事「そのとおりです。いや、よく分かりました。お忙しい
   ところほんとにありがとうございました」

遠藤「いえいえ、何の力添えにもなりませんで。
   又何かあったらいつでもお越しください」
   木村刑事、礼をして去る。

○道
   木村刑事が歩いている。

木村刑事「それにしても妻の英子は、救急車と警察を同時に呼んで
   くれと頼んだ。事故なら救急車だけでいいはずだが?なぜ、
   警察も・・わからん。・・・・・ま、いいか」

○霧が峰の山なみ
   美しいビーナスラインを若林の四駆が走っている。

若林のN「9月に入ってすぐに晶子から手紙が来た。住所は書いて
   なかった。今は母のブティックを手伝っているとのこと。
   もう二度とハムスターは飼わない事を二人で約束して・・・」

○車山高原
   ビーナスラインの夕景色。
   遠くに若林の四駆が見える。

若林のN「芯の強い女性。一本立ちした女性は魅力的だ。でも、
   人間味はあって欲しいな・・・女神湖のように」

○美しい白樺湖の遠景
   四駆が一台走っている。

                     −完−

テーマ曲『夜明けのボサノバ』

♪♪♪ 夜明けの霧の中 二人だけ何も見えず
    手探りで掴んだ心の灯火 今はただ胸の中

    白樺の森の影 あなただけ何も見えず
    手が触れて心ときめき 後はただ霧の中

    昔も今も未来も 白樺の泉のほとり
    不思議な恋の物語 今もまだ夢の中

    今もまだ夢の中 今もまだ夢の中