「もう、放っておいて!」 階段を駆け上がろうとしたら、踏み外して。 「っ!」 「――――笹木!」 バサバサと。 段ボールが落ちると同時に、中に入っていた資料集が階段周辺にばらまける。 私は、―――衝撃もなく、痛くもなくて。 倒れても、いなくて。 ―――水城くんが階段の手すりを右手で握り、左腕で私を支えてくれていて。 私は、水城くんの腕に傾【なだ】れ込む、という形になっていた。 「――――危機、一発…」 ホッとしたような声の、水城くん。 何で。 何で、私を助けるの?