〖…はい。〗

〖今、大丈夫でしょうか?〗

〖大丈夫です、周りには慧しかいないので。敬語なんていりませんよ、シンさん〗

〖あーよかったー…お嬢、ありがとうございます!〗



電話に出ると、聞こえてきたのはハスキーボイス。
この声の持ち主は、御堂組本部の幹部のうちの一人中間真(ナカマシン)さんのもの。

22歳で、私より年上だけど、私の部下。
でも部下というより、頼れるお兄さんのような感じ。
組員の皆は、私を慕ってくれて、私を組長と同じような扱いをしたがるけど、私はそれを断ってる。

まだまだ、私は知らないことばかりで、組員の皆の方が御堂のことをよくわかってるから。



〖今、本会議に向かってる途中なんだけど、現時点で色んな情報が入ってきてるんだ。〗

〖色んな情報?〗

〖各支部の浪費を、今朝、お嬢は話題にしてたけど、浪費が激しいのは関西地方だけみたいなんだ。〗

〖……確かに、資料を見たときそう思いましたが、〗

〖さっき関西支部の奴から言い訳としか取れねえ内容の電話があった。……どうやら、支部の管轄外のすぐのところに、風俗だとかキャバクラがここ最近作られてるらしい。〗

〖…そうですか。〗



電話口のシンさんは、真剣な声色ではなす。

全国的に最近の御堂は落ち着きがない。
特に西側。それは朝桂木さんとも話したとおりで、よくわかってるつもり。

西側の浪費の理由がそういうものであっても、それをきちんと管理するのが幹部の仕事のはず。仕事のお金はちゃんとやってもらわないと困る。

呆れた口調になりながらもシンさんは続けた。



〖調べてみたら、最近西で勢力を上げてる組があって…えっと、あれどこいった
?〗

〖…神永組。〗

〖そうだ、それですお嬢!〗