「…着きましたよ。」

「では、いってきます。」

「ふあー」

「慧、気を引き締めろ」

「…桂木さん、慧はほっといていいですよ 。」



学校の正門の前に停まる黒塗りの車。

学校には、“そういう”組織ではなくただ のお金持ちのお嬢様と言ってあるから問題 はない。 バレないように、学校に近付く御堂組の人 は見た目は優しげな人たちばかりだし。

バタンと扉を閉めると、さっきまで欠伸を していた慧が真剣な表情になって私の半歩 後ろについた。

学校やその他外出先では、慧が護衛でもあ る。



「考え事あるだろうけど、ぼーっとすんな よ」

「ご心配なくー」

「あー、桂木さん見てなかったら小突くの に。」

「………残念だねー」



私たちが校舎に入るまで、桂木さんは車か ら降りて私たちを見ている。

慧は、桂木さんが苦手だ。

桂木さんは御堂組で誰よりも優しい出で立 ちだけれど、実は誰よりも怖い。

慧はそれを、本能で感じ取っているみたい だ。