「しばらくは平和にいきたいよなー」

「うーん、暑いと動き回るの辛いもんなー」

「夏にだけは、問題起こしてほしくねえよ本当。」

「お嬢の前では口を慎めと言ってるだろう、シン、カイ。もう少しよくならないのか、その言葉遣いは」



早々に部屋を出て行こうとしながら愚痴をこぼすシンさんとカイさんは、桂木さんに注意されてチッと舌打ちした。

桂木さんは私がいると、他の組員に対して本当に厳しいらしい。
言葉遣いは綺麗にとか、身だしなみを整えろとか。
……もう、そういうことに関しては諦めてるつもりなんだけどな。

桂木さんは私のことを本当に大切に思ってくれてるみたいなんだけど、それで他の組員からは嫌われ気味。幹部の人はそれをよく知ってるから、こんな態度をしながらも一緒にいるけど、下の組員からは本当に嫌われている。



「あ、桂木さん。」

「…お嬢、どうかされましたか?」

「その…言葉遣いとか、大丈夫ですよ?私は私で、ちゃんとやるので。」

「いえ、これは私が19代目から預かったことなので。お嬢がなんと言おうと、このスタンスでいかせて貰います。」

「…いえ、でも桂木さんが」

「いいんですよ、私の心配なんかなさらなくても。お嬢はもっと他のことを気にかけてくださればいいのです。…お気持ちだけ、受け取っておきますから。」



柔らかな笑みとおやすみの言葉を残して、桂木さんは部屋を出て行った。

三上さんやカイさん、シンさんもとっくに部屋を出ていたので、私も部屋の電気を消して、自室に向かった。


これもまた、いつも通り。
これが、私の“日常”。